人気ブログランキング | 話題のタグを見る
Top
『ホテル・ルワンダ』
2006年 04月 05日 |
仙台駅の東口、ここ二、三年行ってなかったんですけど随分綺麗になってたんですね。
センサーで動くエスカレーターって。
そんなわけで東口にあるちっさい映画館で『ホテル・ルワンダ』を見てきました。
おばちゃんが切符切りやってるのかと思ったらスタッフの皆さんお若かったです……。(はじめて行った)

『ホテル・ルワンダ』
監督:テリー・ジョージ
キャスト:ドン・チードル(ポール・ルサセバギナ)、ソフィー・オコネドー(タチアナ・ルサセバギナ)、ニック・ノルティ(オリバー大佐)、デズモンド・デュベ(デュベ)、デイヴィット・オハラ(デイヴット)、カーラ・シーモア(パット・アーチャー)、ファナ・モコエナ(ビジムング将軍)、ハーキム・ケイ=カジーム(ジュルジュ・ルガンダ)、トニー・キゴロギ(グレゴワール)、ホアキン・フェニックス(ジャック・ダグリッシュ)、ジャン・レノ(本社の社長)
作品紹介:1994年、ルワンダ内戦。100万人が虐殺されたというこの内戦で、世界はルワンダの内情を指の間から見るだけだった。
高級ホテル「ミル・コリン・ホテル」の支配人と、彼の家族、彼の元に集まった人々の実話を映画化。



昴的星:★★★★★

感想:
まず最初に。この映画は、日本以外の国々で絶賛され、2004年度のトロント国際映画祭観客賞、およびアカデミー賞では主演男優・助演女優・脚本賞を受賞し、2005年度のゴールデン・グローブ賞では作品・主演男優・オリジナル主題歌賞など様々な賞を受賞した作品です。
しかしながら、ご存知の方も多いかと思いますが当時日本での公開予定はなく、またこの映画のフイルムを買う会社もないという状況でした。
そこから、この映画の存在を知った青年たちが署名を集め、協力してくれる会社があらわれて公開にこぎつけたという作品です。

大手の映画輸入会社が、アカデミー賞を三つも受賞しているこの作品を買わなかったのは「暗い内容だから観客はつかないだろう」という判断の元のようです。

たしかに本作は実話を基にしているため、重く暗い話です。
でも、悪い作品では決してないでしょう。
大手の対応は「日本人の悪い癖(もっと言ってしまえば「イエロー・モンキー」的なもの)」が出てしまったいい例となることでしょう。

さて前置きはここまでとして。

大量虐殺を行った国、というのは往々にしてがらがらと崩れていくのです。それでも歴史上から虐殺は消えません。国、人種、言葉の違いを超えても存在するその行為から、人間の違いなどささやかなものでしかなく結局人間は愚かでしかないのかと思わされます。
しかしながらその中で、ルサセバギナ氏やその他の愚かさと戦った人々がいたことを忘れてはいけないと思うのです。少しでもいいから、「愚かさ」に勝てる人が増えて自分自身もいつか「愚か」ではなくなりたいと思いました。

暗黒大陸、アフリカ。
アフリカのイメージというと皆そんなものを思い浮かべるかもしれません。
ですが、アフリカにそんなイメージがついたのはほんの二百年ほどまえくらいなのです。
その前は中世から近代の欧州などのように、それぞれの王国に別れそれぞれ独自の文化を営んでいたのです。
そこからしばらくして欧米人がアフリカに上陸したことにより、アフリカは植民地化されそこに住む人々は奴隷とし売り飛ばされ、やがてアフリカは「劣等な」「文明のない」「暗黒な」イメージを押し付けられていくことになります。
今アフリカ――アフリカだけではなく、世界中でで起こっている様々な紛争はその植民地時代に端を発するものがほとんどです。
つまりこの映画に描かれているルワンダ内戦の責任の一端はそんな欧米をゆるし、またそれをかつて良しとした世界にあるといえます。

ですが、世界はルワンダを見捨ててしまいます。
虐殺の映像が世界に配信されれば助けが来てくれるかもしれないというポールにカメラマンは言います。
「世界の人々は、あの映像を見て「怖いね」と言ってディナーを続ける」
また、連合軍が“外国人だけ”を脱出させる段になって国連の大佐は自分の無力さを呪いながらポールに言います。
「私に唾を吐きかけてくれ。“私たち”は君たちを“ゴミ”だと思っている。君は黒人だ。支配人にはなれても、オーナーにはなれない。“ニガー”ですらないのだ」
彼ら自身は決してルワンダの人々をそう思っているわけではありません。
――なんとかしてやりたいけど、なにもできない。
そんな個人の象徴なのです。

けれどポールも個人でした。混乱の中にあって、「強い味方」のいない個人でした。その人が約1200人の命を救ったのです。
個人の力は決して「なにもできない」わけではないのです。
全員を救うことはできない。けれど、「私自身」だけではなく「全くの他人」を「個人」は救うこともできるのです。
そんな「個人」が増えていけば、世界は平和に向けて前進することでしょう。

人間は愚かです。
束になってきた愚かさに、個人個人は無力です。弱いです。ですが、決してなにもできないわけではないのです。

最後に。
この映画を見る人にはエンドマークが出るまで席を立たないで欲しいと思います。
主題歌を聞いてください。
歌など聞く価値がないというなら、冒頭に戻ってみてください。ゴールデン・グローブ賞を受賞した曲です。その他にもこの歌は賞をもらってください。「価値」は保障されています。
ですが私は、賞のあるなしにかかわらず席を立たないでほしいと思いました。

by 7thdragon-sister | 2006-04-05 22:22 | 映画